ロールプレイの相応しい展開とは?

ロールプレイ
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ロールプレイで合格点を取るためのヒント

JCDAの実技試験のうち、論述試験について、これまでの出題形式は、共通部分の逐語録に続いて、事例1と事例2の面談逐語録が提示され、展開の違いについて分析するというものです。その中でキャリアコンサルタントの応答が「相応しいか」「相応しくないか」という設問もあります。論述試験では、設問通りに回答することになるのですが、実はここで言う「キャリアコンサルタントの相応しい応答」というのが、JCDA面接試験におけるロールプレイで合格点を取るための応答の仕方のヒントになっているのです。

逐語録の重要性

論述試験とは繰り返しになりますが、面接試験のロールプレイを紙に書くようなものです。具体的には面談の逐語録の分析(振り返り)をすること、という意味です。養成講座ではロールプレイの録音をして文字お越しをして、逐語録を作るというプログラムがあると思います。逐語録を作る作業は時間もかかり、自分の声を聴くという精神的にもプレッシャーのかかる作業となります。大変ですが、それを乗り超えて、逐語録作成の作業を丁寧にやればやるだけ気づきも多く、面談のスキルアップには大変効果的なものです。特に、自分がなぜこの時この言葉を発したのか?その時自分は何を考えていたのか?何を知りたくてその質問をしたのか?自分という人間を客観的に捉えて自分に向き合うこと、内省すること、これがカウンセリングの本質なのです。

キャリアコンサルタントの面接スキル

論述試験の設問で出てくる逐語録の内、キャリアコンサルタントの相応しい応答が行われているものというのは、JCDAが求めているキャリアコンサルタントの面接スキルが例示されている、と見ることもできます。つまり、面接試験のロールプレイで、このような展開にできれば、合格点が取れるとも言えます。

事例の共通部分に最初の応答のヒントが

過去に出題された論述試験の逐語録を具体的に見ていくと、最初に事例Ⅰと事例Ⅱの共通部分があります。その共通部分の最初の1行目が相談者(クライエント)の来談動機です。面接試験のロールプレイでも相談者は最初に短く一言つぶやきます。これはあくまで来談動機であって主訴(ありたい自分)は別のところにあるということを頭の片隅で考えておく必要があります。この共通部分はキャリアコンサルタントの基本的な応答の例(このような展開が相応しい)が示されていると考えられます。ポイントとなる部分は「受け止め」「伝え返し」「キャリアコンサルタントの最初の応答」です。これらはそのまま実際の面接試験のロールプレイでも流用可能です。

来談動機の中身を確認

実際の論述試験の過去問を見てみると、キャリアコンサルタントの最初の応答では「事柄」に関する質問はしていないことが分かります。例えば第12回のJCDA論述試験で「今の職場でやっていけるか不安」と来談動機が述べられた後、キャリアコンサルタントは「何かありましたか?」とすかさず過去の出来事の質問をしています。この最初の質問を例えば「今のお仕事は何をされているのですか?」などと「事柄」の質問に展開してしまうと、その話の流れになってしまいます。15分間という短い時間で「事柄」の話が中心になってしまう可能性が高くなります。結構キャリアコンサルタントの最初の質問で何を投げかけるか、が面談の展開に大きく影響を及ぼす重要な要素になります。論述試験の逐語の共通部分でキャリアコンサルタントが最初の質問をどのようにしているのか、確認しておくと良いかもしれません。その後は、第12回の逐語録共通部分では、キャリアコンサルタントは来談者が語った(発せられた)「不安」の中身を確認しているのです。 第13回においても同様です。クライエントが「今の新しい部署に馴染めなくて、どうしたらいいかご相談に来ました。」と最初に来談動機を話した後、キャリアコンサルタントが「今の部署に馴染めないということですね。どうされたんですか。」と出来事(経験)をまず最初に聞き出そうとしています。「今の部署ってどんな仕事やっている?」「どんな環境なのか?」「何に馴染めないのですか?」などと「事柄」の質問はしていないことに気づきます。

第15回試験では来談動機が語られた直後に「今の仕事に自信がなくなったということですね。どういうことですか。」と切り出しています。「自信がなくなった」「どうしたらいいか分からなくなった」と問いかけの焦点が絞れない場合の万能質問として「どういうことですか。」を使っています。これは究極のオープンクエスチョンで、クライエントが最も話したい内容を語ってもらうために大変有効な問いかけ方法です。

第17回試験でも「どういうことですか」と応答しています。CLの「園長としての役割がうまく回らない」に対して、CLが何を一番訴えたいのかを確認する意図で、「どういうことですか。」を使っています。限定されない問いかけに対して話したいことが自然に言葉として出てくるのです。ここで何かに限定するような応答をするとCLが話したいことが話せなくなってしまうのです。例えば「園長としての役割ってどういうことですか。」などと応答してしまうと、CLは混乱して話せなくなってしまうのです。

第18回では、キャリアコンサルタントの最初の発言が「もうすぐご定年になられる。これからの働き方についてのご相談ですね。」と閉ざされた質問をしています。それに対してクライエントは「はい、会社としては再雇用制度もあるのですが、私は定年退職しようと思っています。」と、なっていますが、実際には「はい」だけで終わってもおかしくありません。もし「はい」で終わってしまえば次のキャリアコンサルタントの発言が上手くつなげなくなります。逐語ではたまたまクライエントが話をつなげる発言を追加してくれたために助かった感じがします。ここはやはり閉ざされた質問ではなく、「働き方のご相談ですね。もう少し話を聞かせていただけますか。」と返した方が話のつながりができると考えます。

第19回も「働き方」の相談ケースですが、18回と同様にキャリアコンサルタントは冒頭で閉ざされた質問をしています。今回も「はい」の後にクライエントが自ら詳しく話し始めています。実際の面談の逐語とは違い、試験用に作られた感があり、18回、19回の論述試験の逐語はあまり参考になりません。

第20回では「自分の仕事の進め方に自信がなくなってきています。」というCL の発言直後に「何かあったのですか。」と出来事を聴いています。

第21回ではCLが「しっくりこない」という発言を受けて「しっくりこないとはどういうことですか。」としっかりその中身を確認しています。「しっくりこない」という言葉は抽象的なもので日常会話では、なんとなく雰囲気がわかったつもりになって聞き流してしまうケースも多いと思われますが、キャリアコンサルタントの面談としては聞き逃さず捉えていきます。

第22回は「自信がなくなってしまって」に対して「どういうことですか。」とオープンクエスチョンを返しています。第20回でも、「仕事の進め方に自信がなくなった」というフレーズに対して、出来事を聴いています。ポイントは、来談動機の段階で具体的な内容に切り込むとクライエントの話したいことを制限してしまう」という意識です。できるだけクライエントの話したいことを話してもらうためには、何があったか?どういうことか?など、クライエントが何についての話でも制限なく話せるように意図的に応答してることに注目すべきです。

経験への問いかけは必須

共通部分が終わると、ここから事例が1と2に分かれています。「相応しい展開」の事例を注目すると「経験への問いかけ」を行っているところが必ず出てきます。この経験への問いかけは面接試験のロールプレイでも必須の応答、質問と言えます。第12回の事例2で、冒頭に「不安になられたきっかけは?」「具体的な出来事は何かあったのですか?」とあります。その他の経験への問いかける言葉としては「いつからそう感じたのですか?」「最近、そう思ったのはいつですか?」なども考えられます。この「経験の問いかけ」につながる質問、問いかけがスムーズにできるようになると、面談に深みが生まれてくるのです。第13回の事例2の冒頭でも「心苦しく感じてしまいます。」というクライエントの感情が含まれている言葉が発せられた瞬間にキャリアコンサルタントは「最近、他の人に仕事を頼んで、心苦しいという思いになったことはありましたか。」と直近の経験を問いかけています。ここではクライエントは「・・・毎日のことなのです。」と言ってから一週間前の出来事を話しだしてくれましたが、クライエントから返ってくる答えは、最初は「毎日」「いつも」「ずーっと」そのような状態だと話す場合も多いと思います。そのような場合でも「毎日って、昨日もそうだった?」と具体的なピンポイントの出来事に絞り込んでいく必要があるのです。「そうなんですか・・・」などど納得してしまい返してしまうと、せっかく経験への問いかけの入り口が開いたのに、話はそこで終了してしまいます。

第15回ではクライエントの「この仕事はむいていないのかなと悩むようになりました。」という言葉が経験の問いかけを行うきっかけとなっていることがわかります。

第16回や第17回試験では経験の問いかけの質問は事例Ⅰ・Ⅱ共通部分の直後で使われており、分かりやすくなってきています。第17回では「・・・言われましたが、何かあったのですか。」と問いかけを行っており、そのきっかけとなったCLの感情が含まれている言葉は「空回り」です。

18回、19回も事例Ⅰ・Ⅱ共通部分の直後に経験への問いかけが行われています。18回「施設を訪問されて、しっくりこなくて、迷われるようになったということですが、具体的に何があったのですか。」19回「ご主人に「さらっと言われた。」と言われましたが、その時はどんなやりとりをされたのですか」

20回、21回、22回も同様に共通部分直後に経験への問いかけが行われていて非常にわかりやすくなっています。

過去の論述試験の逐語録に応答のヒントがある

その他「相応しい事例」におけるキャリアコンサルタントの応答の部分に注目して過去の論述試験の相応しい逐語録を見ていくと「キャリアコンサルタントの応答は短く」「長く話をするのは相談者」「その話を聞くのはキャリアコンサルタント」というような全体の大きな流れが見えてきます。クライエントが話しやすいように意図的に短く応答しているのです。ただし、あまり短すぎて、クライエントがどの話をしたらよいのか迷ってまわないように、方向付けの言葉も盛り込むのも忘れてはいけません。

経験の問いかけを行う意味はここにある

そして、相応しい展開の事例の後半に出てくるのが、相談者の価値観や信念、意味、意義などを確認するための質問です。ある出来事がきっかけで、現在「不安」に悩まされている。その出来事が示す意味は何だったのか、自分にとってどんな意味があったのか、経験を再現することで、自問自答が促され相談者自身が「あること」に気づくこと、その入り口なるのがこの後半に出てくるキャリアコンサルタントの問いかけなのです。

ロールプレイの模範解答は論述試験の逐語録にある

いわば、ここまでの展開を最初の15分のロールプレイで、どの程度行えるかどうか、を問われるのがJCDAの面接試験なのだと思います。実際には15分間という短い時間ではなかなか思う通りに展開できないこともあるので、その後の口頭試問でできなかったことを今後やりたいことを「補足する」という考えが正解かもしれません。最も具体的でかつ適切な面接試験ロールプレイの模範解答は、論述試験の逐語録にあると言っても良いかもしれません。

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