論述試験問題「問い3」「問い4」の設問が変更された!
第15回の試験で設問に大きな変更があり、全体として難易度が上がりました。第16回でもその流れが踏襲され、今後の試験も同様の設問が続くと思われましたが、第17回試験の「問い3」および「問い4」の設問が、再度変更されたました。具体的には次の通りです。
「問い3」第16回:事例Ⅰ・Ⅱ共通部分と事例Ⅱにおいて、キャリア・・・⇒第17回:「全体の相談者の語りを通して、キャリア・・・
「問い4」第16回:全体の相談者の語りを通して相談者像を想像し、事例Ⅱのやり取りの後、あなたなら・・・⇒第17回:事例Ⅱのやりとりの後、あなたなら・・・
「問い3」の設問の変更については、「事例Ⅰと事例Ⅱは同じ相談者」という設問冒頭の条件を考慮し、同じ相談者なのに事例のどちらかを指定し「相談者の問題点」を記述させることの不合理を解消させたものと思われます。したがって、この変更にによって解答方法を変える必要はないと考えます。しかしながら「相談者の問題点」は相談者の語りの中からしか見えてきませんので、相談者の語りが進む展開にならなければそのヒント(自己概念の影)は出てこないのです。実際に解答を進める上では、内省(自己探索)モードに展開していく事例の逐語を参照することになります。
「問い4」の変更は「全体の相談者の語りを通して相談者像を想像し」がそのまま省かれた変更になっています。「相談者像」と今後の「展開」に関連性を持たせる出題者の意図があったのでしょうが、これによって「問い4」の難易度が一気に上がった感がありました。この短い逐語録からだけで「人物像」を想像せよという厳しい課題です。実際の面談では全体の雰囲気や表情、語りの口調、仕草など、視覚、聴覚、臭覚など様々な情報により「想像すること」はある程度可能かと思われますが、それでもCCtの「主観による人物像」にならざるを得ません。また、CCtの「主観による人物像」をもとに展開されるカウンセリングということが果たして正解なのかどうか、大きな疑問です。そのようなこともあり今回の再変更に至ったのではないかいと想像されます。
今回の設問変更でも、大きな解答方法の流れは変わらず、論述試験の難易度としては前回(16回)に比べ多少易化したのではないかと思われます。今後も設問に微調整が加わる可能性もありますが、大きな流れは変更されないという前提で、過去問題を中心に対策することで、論述試験で合格圏内の得点は可能と思われます。
「問い1」の解き方
キャリアコンサルタントの対応の違いにより事例ⅠとⅡで展開がどのように違っているのかを記述する問題です。50分間という短い試験時間の中で、かなりの時間を消費し配点の高いこの「問い1」をいかに効率的に減点を少なく解答することが求められます。
攻略の近道は、やはり「指定語句」に着目し、指定語句の関連するCCtの発言を抜き出し、展開の違いを解答パターンに従ってまとめていく手法が得策かと思われます。
「キャリアコンサルタントの対応」とは、逐語録の中のCCtの発言の部分です。CCtの発言は事例Ⅰで5回、事例Ⅱで5回、合計10回の発言が記載されています。ここで5つの指定語句に注目し、その指定語句がCCtの発言の中でどの発言と関連するかを特定していきます。
今回の指定語句は「背景」「自己探索」「好意的関心」「説得」「価値観」の5つです。いずれも過去問で繰り返し出されている語句で、目新しい語句はありません。この指定語句だけ眺めていると、抽象的な語句なで、事例のCCtの発言と関連付けることが難しい場合があります。そこで指定語句を具体化するために少し加工(語句を付け加える)することで、関連性を見つけやすくなります。そしてCCtの対応(発言)として相応しいか(事例Ⅱ)、相応しくないか(事例Ⅰ)も同時に区分けしていきます。例えば次の通りです。
- 背景⇒相談の背景を確認する(事例Ⅱ)
- 自己探索⇒自己探索を促す(事例Ⅱ)
- 好意的関心⇒好意的関心を持つ(事例Ⅱ)
- 説得⇒一方的に説得する(事例Ⅰ)
- 価値観⇒CCtの価値観を押し付ける(事例Ⅰ)
次に、逐語録の事例ⅠとⅡのCCtの発言の中から関連部分を特定していきます。
- 背景:何かあったのですか。(事例Ⅱ)
- 自己探索:情けないなという気持ちが湧いて来たのは、Aさんの中で何が起こっているんでしょう。(事例Ⅱ)
- 好意的関心:悶々というのは、自分のことをわかってくれないという気持ちからですか。(事例Ⅱ)
- 説得:Aさんの考えややり方が浸透していくには、もう少し時間がかかるのではないですか。(事例Ⅰ)
- 価値観:園長がトップとして方向を示して、それで進めていくのは、組織としては普通だと思うのですが、どう思われますか。(事例Ⅰ)
最後は、いつもの解答パターンに従ってまとめていきます。解答パターンとは「事例Ⅰでは、①のため、②という展開になっている。一方事例Ⅱでは、③のため、④という展開になっている。」 というものです。①③には「キャリアコンサルタントの対応」、②④には、「この面談の方向性」を入れていきます。また、面談の進め方・流れの基本、すなわち「受け止め」⇒「共感」⇒「経験への問いかけ」⇒「自己探索」⇒「自らの気づき」ができているかどうか、の要素も盛り込むことも忘れずに解答を仕上げます。論述試験の「問い1」は、この面談をCCtとして俯瞰できているかどうか、を問われているのです。
「問い1」の解答例
事例Ⅰでは、「何か自分が空回りしているような気がしました。」というAさんの気持ちを受け止めようとせず、「大きなイベントの決定などは園長がトップとして方向を示して、それで進めていくのは、組織としては普通だ」というCCtの価値観を押し付けたり、「Aさんの考えややり方が浸透していくには、もう少し時間がかかるのではないですか。」と一方的に説得することで、Aさんに寄り添うことなくAさんの内省が進まない展開となっている。一方事例Ⅱでは、Aさんの気持ちを受け止めて、「何かあったのですか。」とAさんの相談の背景を確認したり、「悶々としてしまいました」という発言を捉えて「悶々というのは、自分のことをわかってくれないという気持ちからですか。」と好意的関心を寄せている。そして「情けないなという気持ちが湧いて来たのは、Aさんの中で何が起こっているんでしょう。」とAさんの自己探索を促すことで、Aさんの内省が進む展開となっている。
「問い2」の解き方
CCtの応答が相応しいか、相応しくないかを理由をつけて答える問題。キャリアコンサルタントとして「やってはいけないこと」、「やらなくてはならないこと」を整理しておけば、即答できるサービス問題です。「問い1」と基本的な解答スタンスは同様です。
「問い2」の解答例
CCt7:相応しくない(理由:Aさんの「何か自分が空回りしているような気がしました。」という感情が込められた言葉を受け止めようとせず、「園長がトップとして方向を示して、それで進めていくのは、組織として普通だ」という一方的なCCtの価値観を押し付ける応答で、Aさんに寄り添っていない。
CCt10:相応しい(理由:「情けないなという気持ちが湧いて来たような気がします。」というAさんの言葉を受け止めて「Aさんの中で何が起こっているんでしょう。」とその意味を問いかけることで、Aさんの内省を促している。
「問い3」の解き方
「キャリアコンサルタントとして、あなたの考える相談者の問題点」を答える問題です。この問題は「来談動機」「主訴」「自己概念」「経験」を逐語録の中から読み解き、整理することが解答へのポイントとなり近道です。無理やり「自己理解不足」「仕事理解不足」「コミュニケーション不足」など抽象的な結論ありきで解答を作り上げることが無いよう注意が必要です。
「相談者の問題点」とは何を意味するのか、をまず整理したいと思います。相談者は様々な悩みを抱えて相談に来ます。その悩みの内容は「不安」「不満」「葛藤」などです。それらがどうして生じているのか。その答えは、自己概念と経験とが合致していないためです。その合致していない原因に当たるものが「相談者の問題点」であると言えます。相談者はそうした「問題点」があることに気づいていないか、あるいは問題点と思っていることとは別の「問題点」があることに気づいていないのです。
- 来談動機:園長としての役割がうまく回らない
- 自己概念:園の運営を担いながら自分の考え方やノウハウを伝えて質の高い保育を創りたい。しっかりしたスキルや知識があればやりがいを持って考え、行動できる
- 経験:保護者の要望に対し、自分が対応したことで職員から「もう少し信用して欲しかった」「少し寂しかった」と言われ悶々とした
- 主訴:職員がのびのびと仕事ができるようにしたい
「問い3」の解答例
しっかりとしたスキルや知識さえあれば、やりがいを持って仕事ができるという、非論理的な信念を抱いているところ
「問い4」の解き方
今後の面談の展開を理由も含めて具体的に記述する問題。「問い3」で整理したポイントをもとに「主訴」を意識し、相談者が自ら「問題点」に気づき、解決に向かうよう支援していく、というのが基本的な今後の展開の流れになります。「園長の役割にこだわり過ぎているのかな。」という事例Ⅱ最後にある「相談者の気づき」を受け止めて、展開していくことになります。今後の展開を構成する上で「経験の再現」は重要なファクターになります。また、設問の「理由も含めて」は設問の捉え方が難しいところですが「相談者の問題点に相談者自ら気づいてもらうため」ということになるのでしょうか。
「問い4」の解答例
Aさんが思い抱いている「園長の役割」について具体的にどのようなことなのか、一つひとつ整理してもらい、園の運営や職員への知識の伝達だけが「園長の役割」ではないことに気づいてもらう。そしてAさんは、「スキルや知識があればやりがいを持って仕事ができる」という思い込みがあるため、「やりがい」とは何か、「やりがい」を感じた過去の経験や出来事などを語ってもらい、どのような時「やりがい」を感じたのか、あるいは、どのような時「やりがい」を感じなかったのか、確認してもらう。信頼されて仕事を任されることも「やりがい」のひとつであることに気づいてもらい、仕事に前向きに取り組めるよう支援していく。
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