第16回論述試験解答例(JCDA実施分)

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解答記述への進め方

第15回試験では、論述試験の設問の内容がこれまでの試験から変更されました。第16回も第15回と同様の設問になっており、今後もしばらく継続されると思われます。相談内容はコロナ渦での在宅勤務という時事的な相談で、意表を突かれた感がありますが、相談内容にかかわらず、キャリアコンサルタントとしての基本姿勢を貫くことを忘れずに冷静に受け止めれば、落ち着いて解答を進めることができると思われます。つまり、相談の事例内容ではなく相談者本人に焦点を当てることを忘れない、ということです。

「問い1」の解き方

指定語句を使用して解答するという「縛り」がある以上、おもむろに解答を書き始めるよりも解答手順を決めて、ある程度機械的に進められる方法をとる方が、結果的に短時間で解答を導き出すことができると確信しています。今回も「指定語句」に注目し、その「指定語句」に関連する部分を設問の逐語録の中のCCtの発言の中から特定し、「解答パターン」に沿って文書をまとめるという進め方、解答例をご紹介します。

最初の作業は「指定語句」の分類です。その指定語句がキャリアコンサルタントの応答として相応しいものなのか?相応しくないものなのか?という分類です。どちらに使うか迷う語句がある場合があります。今回で言えば「ものの見方」です。このような語句は、言葉を付け加えて語句を加工すると使いやすくなります。例えば「ものの見方」では「一方的な」を前に付けて「一方的なものの見方」とすることで、相応しくない語句として分類することができます。

  • 相応しいもの:「焦点」「内省」
  • 相応しくないもの:「事柄」「助言」「(一方的な)ものの見方」

次に、設問逐語録の中から関連個所を特定していきます。事例Ⅰが「相応しくない展開」で事例Ⅱが「相応しい展開」なのですが、どちらか迷うという方は、「問い3」の設問を見ると答えが書いてあります。「事例Ⅰ・Ⅱ共通部分と事例Ⅱにおいて、・・・」という部分の「事例Ⅱ」です。こちら(事例Ⅱ)が「相応しい展開」ということになります。基本的にはCCtの応答の中から関連個所を見つけます。

事例ⅠではCCtの応答は5か所あります。この中で「事柄」「助言」「ものの見方」の関連部分を特定します。CCt7の「仕事上で何か問題が起きているのですか。」は「事柄」に関する応答です。CCt8の「いつから在宅勤務に入られたのですか。」も「事柄」の応答と言えます。CCt9の「これからは在宅勤務が定着して・・・必要ありますよね。」という応答は「(一方的な)ものの見方」と言えます。CCt11の「使うことで慣れてくるのではないですか。」は「助言」と言える応答です。

事例ⅡでもCCtの応答は5か所あります。CCt9の「その時にはどんな気持ちが湧いてきたのですか。」は「内省」を促す応答です。CCt10の「それはどういう疑問ですか。」はCLの「疑問」という発言に「焦点」を当てた応答と言えます。

語句の該当箇所が特定できれば、後は解答パターンに沿って文書をまとめるだけです。解答パターンとは「事例Ⅰでは、①のため、②という展開になっている。一方事例Ⅱでは、③のため、④という展開になっている。」 という感じです。①③には「キャリアコンサルタントの対応」、②④には、「この面談の方向性」を入れていくというものです。

また、面談の進め方・流れの基本、すなわち「受け止め」⇒「共感」⇒「経験への問いかけ」⇒「自己探索」⇒「自らの気づき」ができているかどうか、の要素も盛り込むことも忘れずに解答を仕上げてください。「問い1」は、この面談を俯瞰できているかどうかを問われているのです。

「問い1」の解答例

事例Ⅰでは、在宅勤務で「不安」になっているAさんの気持ちを受け止めようとせず、仕事上の問題点や在宅勤務の開始時期など事柄の質問を繰り返したり、「マネジメント手法やコミュニケーションのとり方も変化に慣れていく必要がある」と、CCtの一方的なものの見方で「それも使うことで慣れてくるのではないですか。」といった助言により、Aさんに寄り添うことなくAさんの自己探索が進まない展開となっている。一方事例Ⅱでは、オンライン会議でほとんど発言ができなかったというAさんに「その時はどんな気持ちが湧いてきたのですか。」と内省を促す応答やAさんが望んでいるリーダーシップに関する「疑問」に焦点を当てることで、Aさんの自己探索が進む展開となっている。

「問い2」の解き方

指定個所の「相応しい」か「相応しくないか」の判断と理由を記述する問題。「問い1」と同系列の問題で短時間で解答できるサービス問題と言えます。

「問い2」の解答例

CCt9:相応しくない(理由:在宅勤務に「不安」抱いているAさんに寄り添うことなく、変化していくマネジメント手法やコミュニケーションのとり方に慣れる必要があるといったCCtの価値観を押し付ける応答で、内省が促されていない。)

CCt11:相応しい(理由:「リーダーシップとは何か」というAさんの「疑問」に焦点を当てて寄り添い、矛盾点を整理し明確化することで内省を促し、Aさんの自己探索を進ませている。

「問い3」の解き方

「キャリアコンサルタントとして、あなたの考える相談者の問題」を記述する問題です。この問題を解くためには、まず相談者の「主訴」を解明(想定)する必要があります。「主訴」とは簡単に言えば、現在陥っている「よろしくない状況」(「不安」「不満」「葛藤」など)から解放されたい、ということだろうと思います。それらの「よろしくない状況」は何によって生じているのか?その答えは「経験と自己概念の不一致」ということになります。なぜ不一致の状態になっているのか?その不一致の原因が「相談者の問題点」なのです。面談の流れを簡単に整理すると見えてきます。

  • 管理職としての立場に「不安」を感じている(来談動機)
  • メンバーとのコミュニケーション不足の「不安」「焦り」を感じている
  • 少ない人数で顔を突き合わせ意見をまとめることが得意技であった(自己概念)
  • オンライン会議でほとんど発言できず「強いリーダーシップが必要だ」と痛感(経験)
  • オンライン会議では「強いリーダーシップが必要」であると感じるがその一方で「ああなりたくない」という気持ちが湧いた

主訴を「在宅勤務でも管理職の立場に不安を感じないようにしたい」と想定します。メンバーとのコミュニケーションに自信を感じていたがオンライン会議ではほとんど発言できなかった。この経験で不安を感じてしまった原因は「オンライン会議では強いリーダーシップが必要」で「自分には強いリーダーシップがない」というAさんの「思い込み」であると整理できます。

「問い3」の解答例

オンライン会議では強いリーダーシップが必要で、自分には強いリーダーシップがない、という思い込みがあるところ。

「問い4」の解き方

「問い3」で相談者の問題点が解明できれば、今後の面談の進め方は、問題点について相談者自らが気づく⇒その問題点を修正(自己概念の修正)⇒経験との不一致を解消する⇒仕事に前向きに取り組めるよう支援していく、という流れとなります。事例Ⅱの最後に掲載されているAさんの語り「何か矛盾してますね。何が大事なのかな。」がヒントになります。

また、第15回試験から「問い4」の設問文に「相談者像を想像し」と「その理由も含めて」という文言が新たに入りました。解答の中に「相談者像」を想像している記述や「理由」の記述が無いと、減点される可能性もありますので、どこかでその記述を入れた方が無難だと思われます。

「問い4」の解答例

何よりもメンバーのケアを優先に考える心の優しいAさんに、在宅勤務で自信をなくしてしまった原因となった「自分の求めているリーダーシップ」とはどのようなものなのかについて、具体的な過去の経験や出来事を語ってもらい、自ら確認してもらう。その過去の経験とオンライン会議での経験を照らし合わせて、Aさんが得意とする意見取りまとめのスキルを活かす方法や不足しているスキルは何なのかを明らかにしていき、仕事に前向きに取り組めるよう支援する。

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