設問の傾向
第18回の試験から、基本的な設問には変更ありません。
「問い1」の解き方
事例Ⅰと事例Ⅱの展開の違いを指定語句を持ちいて述べる問題です。展開の違いが生じるのは、CCtの応答の違いということになりますが、逐語録の「事例Ⅰ・Ⅱ共通部分」の最後のCLの発言を受ける次の応答部分、つまり「例Ⅰ」「事例Ⅱ」の最初のCCtの応答部分が「展開の違いの分岐点」となることを念頭に置く必要があります。今回の問題では、CL7とCCt7の発言のやりとりが、重要ですがその中でもCLの言葉「さらっと言われ」が「問い1」のみならず「問い3」「問い4」を答える上でもポイントとなることを押さえておく必要があります。「問い1」を短時間で効率的に解答するためのひとつの方法として「指定語句に着目する方法」を解説していきます。その手順は次のとおりです。
- 指定語句を相応しい応答にかかわる語句なのか、相応しくない応答の語句なのかを区分けする
- 抽象的な指定語句は、語句を補足して、具体的にとらえられるように加工する
- 各事例のCCtの応答が、どの指定語句にかかわるものか特定する
- 解答パターンに当てはめて、解答を仕上げる
まず、指定語句の具体化と区分けです。一例として、下記のように指定語句を加工・区分けしていきます。
- 「経験」⇒経験への問いかけ(相応しい応答)
- 「誘導」⇒CCtの価値観で誘導する(相応しくない応答)
- 「共感」⇒共感的に理解する(相応しい応答)
- 「決めつけ」⇒一方的な決めつけ(相応しくない応答)
- 「自己探索」⇒自己探索を促す(相応しい応答)
次に、事例Ⅰと事例Ⅱから指定語句に関連するCCtの応答を特定していきます。事例Ⅰからは「誘導」と「決めつけ」に関連する応答を、事例Ⅱからは「経験」「共感」「自己探索」に関連するCCtの応答を特定していきます。具体的には下記のとおりです。
- 「誘導」:今置かれている状況をしっかり把握されて判断されてはどうですか。(事例Ⅰ)
- 「決めつけ」:ご主人も家庭を優先してほしいと思われているんですね。(事例Ⅰ)
- 「経験」:ご主人に「さらっと言われた。」と言われましたが、その時はどんなやりとりをされたのですか。(事例Ⅱ)
- 「共感」:そのピザ屋さんの思いに感動されたということですね。(事例Ⅱ)
- 「自己探索」:Aさんは、何を我慢しようとしているんですか。(事例Ⅱ)
ここまで指定語句の整理ができれば、あとは解答パターンに当てはめて仕上げていくだけです。繰り返しになりますが「問い1」の設問にある「違い」とは事例Ⅰと事例Ⅱの「展開の違い」を述べるものと考えられるため、解答の基本パターンは「事例Ⅰでは、①のため、②という展開になっている。一方事例Ⅱでは、③のため、④という展開になっている。」 ということになります。①③には「CCtの応答」、②④には「面談の方向性」を入れていきます。ここで「方向性」とは、例えば、CLの自己探索が進む展開になっているか、進まない展開なのか、ということになります。また、面談の進め方の基本を押さえておくことも重要です。つまり「受け止め」⇒「寄り添い」⇒「経験の再現」⇒「自己探索」⇒「気づき」ができているかどうか、の要素も盛り込むことも忘れずに解答を仕上げます。解答パターンの基本形に上記の要素を組み込んだパターンの例は次の通りです。「 事例Ⅰでは、CLの(感情)という感情を受け止めようとせず、「(相応しくない具体的なCCtの応答の内容)」という(指定語句)のため、CLに寄り添うことなく、内省が進まない展開となっている。一方事例Ⅱでは、CLの(感情)という感情を受け止め、共感して、 「(相応しい具体的なCCtの応答の内容)」という(指定語句)のため、CLの内省が進む展開となっている。」 ご自身の言葉でこのような解答パターンをあらかじめ用意しておき、試験本番ではこれに「整理された指定語句」を当てはめてゆくのです。
「問い1」の解答例
事例Ⅰでは、夫から「さらっと言われた」というCLの言葉を受け止めようとせず、CCtの「ご主人も家庭を優先してほしいと思われているんですね。」という一方的な決めつけや「今置かれている状況をしっかり把握されて判断されてはどうですか。」とCCtの価値観で誘導することで、CLに寄り添うことなく、内省が進まない展開となっている。一方事例Ⅱでは、CLの「さらっと言われた」という感情が含まれた言葉を受け止めて、「その時はどんなやりとりをされたのですか。」と経験への問いかけをおこなったり、「そのピザ屋さんの思いに感動されたということですね。」と共感的に理解したり、「Aさんは、何を我慢しようとしているんですか。」と自己探索を促すことで、CLの内省が進む展開となっている。
「問い2」の解き方
CCtの応答が相応しいか、相応しくないかを理由をつけて答える問題です。CCtとしての応答で「やってはいけないこと」「やらなくてはならないこと」をあらかじめ整理しておば、即答可能です。
「問い2」の解答例
事例ⅠのCCt11:相応しくない(理由:Aさんの「眠っていたものを起こされたような感覚」というCCtの感情が込められた言葉を受け止めようとせず、「 そういう漠然としたものを根拠にするより、今置かれている状況をしっかり把握されて判断されてはどうですか。 」というCCtの価値観で一方的に誘導するような応答で、Aさんに寄り添っていない。
事例ⅡのCCt11:相応しい(理由:「我慢させられようとしている、自分も我慢しようとしているとの思いがこみ上げてきて、なぜか悲しさを感じました。」というAさんの感情が込められた言葉を受け止めて、「Aさんは何を我慢しようとしているんですか。」とその「我慢の意味」を問いかけることで、Aさんの自己探索を促している。
「問い3」の解き方
「相談者の問題と思われる点」を記述する問題です。解答する前提として「相談者の問題」の本質(相談者の問題とはどのようなことを指すのか?)を整理・理解しておくことが必要です。
相談者は様々な悩みを抱えて相談にやって来ます。その悩みの中身は「不安」「不満」「葛藤」などです。それらが、なぜ生じているのか?その答えは、「自己概念」と「経験」とが合致していないためなのです。その合致していない原因に当たるものが「相談者の問題点」であると言えます。相談者はそうした「自身の問題点」があることに気づいていない、または「環境や他者に問題がある」と思い込んでいる可能性があるのです。
この問題の解き方の手順としては、設問の逐語録を読み解き、面談の流れ(ポイント)をまとめて、「来談動機」「自己概念」「経験」「主訴」を整理していきます。
- これからどんな働き方をするか迷ってる(来談動機)
- 家庭生活を第一に考えてきた。家に母親がいることが子供にとって大切(自己概念)
- 義母が入院したとき時短勤務に切り替えて世話をして家族から感謝され嬉しかった
- 仕入れ部門の応援をしたとき、いい仕事だと思った
- 異動の話を断ろうと思っていたが、夫に「家庭優先だよね」とさらっと言われた(経験)
- 我慢させられようとしている、自分も我慢しようとしていることに気づき、悲しさを感じた
- 仕入れ担当の人がピザ屋さんの思いをたくさんの人に届けようとしていることに感動したことを改めて思い出した
ここまでのやりとりを整理た後は「主訴」を想定していきます。「主訴」とは、現在自分の身に降りかかっている「悩み」(「悩み」のい中身は「不安」や「不満」などがありますが、今回は「葛藤」ということになるでしょう)を無くしたい、解決したい。自分の「ありたい姿」を実現したい、ということになると思います。ここまでのやりとりで見えてくる主訴は、「仕事と家庭の両立をして、自分の人生を歩みたい」と想定できます。
異動のことを夫に話したとき、「家庭優先だよね」という当然想定された答えが「さらっと」返って来た時の違和感に気づいた経験が、それまで「我慢していた」ことへの気づきにつながったのです。
「問い3」の解答例
仕事と家庭の両立は困難で、自分の人生を歩むことはできないという、思い込みがあるところ。
「問い4」の解き方
今後の面談のやりとりは、主訴を意識し、「問い3」の答え(相談者の問題点)を前提とした解決に向けた支援ということになります。今後のやりとりの展開としては、「仕事と家庭の両立はできない」と思っている「思い込みの検証」が考えられますので、その流れで解答の組み立てを行っていきます。「仕事と家庭の両立」項目としては次のようなことが挙げられます。
- 仕事理解:なぜレジ部門から仕入れ部門の異動の話が出たのか?仕入れの仕事は必ず出張や残業、休日出勤がある仕事なのか?それらを回避できる環境がないのか?
- 自己理解:仕事と家庭の両立をどのようにとらえているのか?本当にやりたいことは何なのか?過去の経験を語ってもらい、自ら気づいてもらう
- 職場の理解:家庭の事情がある場合、勤務上の配慮、支援は受けられるのか?それらのことを上司に相談したことはあるのか?
- 家族の理解:子どや両親は、どのように考えているのか?理解や支援は得られないのか?話し合ったり、相談したりしたことはないのか?
- 夫の理解:自分の正直な気持ちを話し、仕事と家庭が両立できる方策を話し合うことはできないのか?
これらの要素をまとめていきます。「理由も含めて」という設問は、なかなか捉え難いところですが、相談者の問題点の部分を記述することでクリアできると考えます。
「問い4」の解答例
仕事と家庭の両立は困難で、自分の人生を歩むことはできないという、思い込みがあると思われるため、職場や上司、両親や子供、夫の理解や支援が得られないかどうか、相談した経験がないかどうか確認していきます。あるのであれば、そのような経験を語ってもらうことによって、自分の思い込みとの違いに気づいてもらい、周囲からの理解や支援が得られるように自から働きかけてもらいます。そして、これからの働き方について自己決定でき、自分の人生を歩めるよう支援していきます。
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