第22回論述試験解答例(JCDA実施分)

論述試験
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問題の傾向

第21回試験と比較し、設問の変更はありません。事例(逐語録)の構成も同様で、過去問対策を的確に行えば、減点の少ない解答を記述できると思われます。

「問い1」の解き方

5つの指定語句を使用して、事例Ⅰと事例Ⅱの展開の違いを記述する問題です。この「指定語句」の使用を解答への「制限」と捉えるのではなく、解答への「ヒント」と捉え、指定語句と事例におけるキャリアコンサルタントの応答との関連を特定し、「解答パターン」に当てはめ、仕上げていきます。

50分間という時間制限のある試験であるため、時間の浪費を最小限に抑え、的確に解答するためのひとつの方法として、有効と考えます。

今回の指定語句は、「背景」「ものの見方」「共感」「自己探索」「決めつけ」の5つですが、過去の試験でも何度も出されたことのある語句ばかりです。この指定語句の関連するキャリアコンサルタントの応答を特定していくのが最初の作業となります。特定する上で、指定語句の意味が理解されていないと、どの応答が関連するのかを判断するのは難しいと思われますので、まずそれぞれの語句のキャリアコンサルタント的な意味合いを整理しておきます。

  1. 「背景」:事実や現象が起こった背景にある要因
  2. 「ものの見方」:物事をどのように見るか、評価するか、または解釈するかについての視点や態度
  3. 「共感」:相手の気持ちや立場に寄り添い、共感し、理解すること
  4. 「自己探索」:自分自身の内面を探求し、自分自身の価値観、興味、人格的特性などを理解し、自己理解を深めること
  5. 「決めつけ」:相手に対して自分自身の判断や価値観を押し付け、その人の自己決定の自由を奪ってしまうこと

事例Ⅰ、事例Ⅱともキャリアコンサルタントの応答は5回づつ、合計10回ありますのでその中から指定語句の関連を確認していきます。

  • 「背景」:会議ではどんなことがあったのですか(事例Ⅱ、CCt6)⇒経験に問いかけ、エリアマネージャーに向いていないと思った「背景」を確認しようとしている
  • 「ものの見方」:それはどうしてですか(事例Ⅱ、CCt8)⇒企画を出すのは無理だと思ったという発言を受けて、クライエントの「ものの見方」を確認しようとしている
  • 「共感」:店に戻ろうと考えておられるのですか(事例Ⅰ、CCt9)⇒なぜか躊躇してしまったというクライエントの気持ちに「共感」せず、寄り添っていない
  • 「自己探索」:悔しいと思いながら、年上や先輩の意見を尊重しようとするのはどうしてですか(事例Ⅱ、CCt10)⇒自問自答を促し、自己理解を深めようとしている
  • 「決めつけ」:エリアマネージャーは強いリーダーシップがいるのではないでしょうか(事例Ⅰ、CCt7)⇒CCtの考えを押し付け「決めつけ」ている

指定語句が逐語録のCCtの発言のどの部分に該当するのか特定できれば、あとは解答パターンに当てはめて、事例Ⅰと事例Ⅱの「展開の違い」を記述していきます。解答パターンとは「事例Ⅰでは、①のため、②という展開になっている。一方事例Ⅱでは、③のため、④という展開になっている。」 です。①③には「CCtの応答」、②④には「面談の方向性」を入れていきます。ここで「面談の方向性」とは、CLの内省が進む方向になっているか、進まない方向なのか、ということになります。

CCtが面談することの目的に沿った基本的な流れを解答文に盛り込む必要もあります。「受け止め」⇒「寄り添い」⇒「経験の再現」⇒「自己探索」⇒「気づき」の流れができているかどうか、ということです。事例Ⅰ・Ⅱの共通部分の最後のCLの発言は、CLの感情が込められた言葉が出てきます。この言葉を受け止めているか、受け止めていないかが、面談の方向性の違いのきっかけになっています。

「事例Ⅰでは、CLの(感情)という感情を受け止めようとせず、「(内省が進まない具体的なCCtの応答の内容)」という(指定語句)のため、CLに寄り添うことなく、CLの内省が進まない展開となっている。一方事例Ⅱでは、CLの(感情)という感情を受け止め、共感して、 「(内省が進む具体的なCCtの応答の内容)」という(指定語句)のため、CLの内省が進む展開となっている。」

「問い1」の解答例

事例Ⅰでは、「自分はエリアマネージャーには向いていないのかなと思ったりしてしまいます」というCLの感情を受け止めようとせず、「エリアマネージャーは強いリーダーシップがいる」というCCtの考えを押し付け、決めつけたり、「なぜか躊躇してしまった」というクライエントの気持ちに共感せず、「店に戻ろうと考えておられるのですか」など、CLに寄り添うことなく、CLの自己探索が進まない展開となっている。一方事例Ⅱでは、「会議ではどんなことがあったのですか」など、経験への問いかけを行い、エリアマネージャーに向いていないと思った背景を確認しようとしたり、「企画を出すのは無理だと思った」という発言を受けて、クライエントのものの見方を確認しようとしている。そして「悔しいと思いながら、年上や先輩の意見を尊重しようとするのはどうしてですか」と自問自答を促し、CLの自己探索が進む展開となっている。

「問い2」の解き方

CCtの応答が相応しいか、相応しくないかを理由をつけて答える問題。CCtとしての応答で「やらなくてはならないこと」(=相応しい応答)「やってはいけないこと」(=相応しくない応答)をあらかじめ整理しておきます。

「やらなくてはならないこと」(=相応しい応答)

・良い問題解決や成長を導き出す ・ニーズを感じる ・問題解決のプロセスを促すかかわり ・自己探求を深める質問 ・自問自答を促す質問 ・自分の問題を明確にしていくのを支援する質問 ・CLの語りを促す ・焦点をCLのニーズに当てる

「やってはいけないこと」(=相応しくない応答)

・正しい答えは何だろうと考える ・CCtの興味で質問する ・CLを方向づけてしまう ・何気なく思いつきで自己開示する ・CCt自身が話したいことを話す ・CCtの価値観で・・・ ・CCtが断定的に・・・ ・問題解決に走る ・CCtが一方的に決めつける

「問い2」の解答例

事例ⅠのCCt10:相応しくない(理由:どうしたらいいのかまだ整理がつかないCLの感情を受け止めず、CCtの価値観を一方的に押しつける応答で、Aさんに寄り添っていない。)

事例ⅡのCCt10:相応しい(理由:先輩の言うことは尊重しないと思っている一方で、計画してきた案を出すことを我慢する悔しさを強く感じているAさんの矛盾を受け止めて、Aさんが自らその矛盾や不一致に向き合うことを促している。)

「問い3」の解き方

「相談者の問題点」とは、クライエントの自己概念(ありたい自分)と出来事(経験)の不一致が生じている状態と言えます。

不一致の状態とは、具体的には、適職選択の難しさ、転職やキャリアアップの方法や手順の不明確さ、自己分析の難しさ、職場でのストレスや人間関係、スキルや能力不足、キャリアプランの見失い、ライフプランとのバランスなどが挙げられます。

そして、クライエントがその問題を抱える原因や、その問題に対する認識や考え方などが「相談者の問題と思われる点」ということになります。具体的には、相談者の思い込みや非論理的な信念、自己分析やキャリアプランニングに取り組む姿勢や、自己のスキルや価値観についての自覚度合い、社会情勢や業界動向についての知識や関心度合い、コミュニケーション能力やストレスマネジメント能力などが挙げられます。

今回の面談を整理してみると次のように捉えられます。

  • 来談動機:エリアマネージャーとしてやっていける自信がなくなった
  • 自己概念:スタッフの人たちの意見を聴き、一緒に相談をしながら仕事の成果を上げるのが自分のスタイル
  • 経験:他の意見を聴くのではなく、強いリーダーシップを発揮することが成果につながると年上や先輩から言われた
  • 主訴:自分のスタイルを活かしてエリアマネージャーとしての役割を果たしていきたい
  • キーワード(自己概念の影):躊躇

「問い3」の解答例

経験豊富な先輩や年上の意見を尊重することが、新米で経験の少ない自分の意見より優位にあると考え、エリアマネージャーとして認められる要因であると思い込んでいるところ

「問い4」の解き方

今後の面談の方向性は、相談者の主訴(自分のスタイルを活かしてエリアマネージャーとしての役割を果たしていきたい)を意識し、相談者の問題点を前提とした解決に向けた支援ということになります。事例Ⅱの最後のCLの発言がその後のやりとりの出発点となります。

「う~ん。」と内省が進んでいることが示され、「どうしてかな・・・」と、自問自答が続いています。さらに「周りに認められたい」「能力のない人と思われるのが怖い」「それだと何かおかしい」というキーワードも出てきました。CCtとしては、この発言を捉えて、さらにCLの自己探索を深めて「気づき」を「自己決定」へ導く支援をしていくことになります。

「問い4」の解答例

自分の意見を言うことを躊躇している原因を明らかにして自ら気づいてもらうために、「周りに認められたい」「能力のない人と思われるのが怖い」と感じた経験を語ってもらう。そして、周りに認められること、能力のある人と思われることの意味、捉え方、考え方を確認してもらう。また、「自分のスタイル」(強み)についても過去の経験などからその具体的な中身を明確にしてもらう。そして、自分のスタイルを活かしてエリアマネージャーとしての役割を果たし、自信をもって仕事に前向きに取り組んでいけるよう支援していく。

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